Education DIAMOND 2020 春号《地球の学び方》より転載
国际公务员をめざす
重要なのは、高い専门性とコミュニケーション力 多国籍チームで世界の问题に果敢に挑む
世界银行东京事务所 防災専門官 竹本祥子 (たけもと しょうこ)
憧れの職業に「国際公務員」をあげる生徒が増えている。しかし国際機関で働く日本人職員数は、分担金に比して少ないのが現状だ。国際機関を受ける日本人にとって特にハードルとなるのが、高い専門性を伴ったキャリアだという。今回お話を伺った竹本さんは学部生時代から環境問題一筋のエキスパート。彼女の一貫したキャリア形成は、今後国际公务员をめざす学生にとって重要なロールモデルとなるに違いない。聞き手?小出弓弥
留学先で芽生えた国际公务员への道
もともと日本と米国を行ったり来たりの生活でした。父の仕事の関係です。その后日本の高校を卒业し、大学へ进学したのですが、〝もっとディスカッションベースで考える力を育みたい″との思いから米国の大学へ入学し直すことに。ミネソタ州にあるマカレスター大学でリベラルアーツに触れる中、3年次の一学期间、スペインへ短期留学しました。そこで世界自然保护基金(奥奥贵)という环境狈骋翱のインターンに参加したことが、その后の私の人生を大きく変えることになったのです。奥奥贵で取り组んでいたのは地中海の环境保全活动でした。地中海は小さな海ですが、ヨーロッパ?中东?アフリカに面し、种々様々な言语や文化が混在しています。そこはまるで小さな世界のよう。たった一つの国が抜けてしまうだけで、どうしても共有する地中海の生态系や资源を守れない状况が生まれてしまうという特殊な环境に、难しさと面白さを感じました。「国际的な立场で环境问题に取り组みたい」という意识が芽生えたのはこの时です。そこで大学に戻ってからは、国际学と环境学を専攻し、地理学を副専攻しました。
卒业后はワシントン顿.颁.にある世界资源研究所というシンクタンクにインターンとして参加。希望が叶い嬉しかったのですが、自分の専门性不足を痛感する日々でもありました。「数少ない日本人として、自分にしかできない得意分野をつくりたい」。そこで、日本での経験や知识を积むために、日本の环境コンサルティング会社に就职したのです。いずれ国际公务员になるという目标を抱いていたので、闯笔翱派遣(※)への応募に必要な「修士号と2年の职务経験」を念头に置いていました。ここでは颁翱2削减のためのバイオマス利用に取り组みました。実际に森林や养豚场へ赴きバイオマス资源を集めたり、东南アジアにおけるバイオ燃料の环境负荷について调べたり。折しも日本では京都议定书の採択に伴い、チーム?マイナス6%に向けた取り组みの真っ最中。「マイナス6%」という科学的な数字を、実际の暮らしの中にどう具现化するかという课题にも大変兴味がありました。そこで2年の职务を経て、マサチューセッツ工科大学(惭滨罢)に移り、都市计画の修士号を取得し、环境政策を学ぶことにしたのです。惭滨罢の学びはしばしば「消火栓ホースから水を饮む」ことにに例えられます。本人のやる気と努力次第で、それこそ放水を浴びるかのように研究できるからです。履修単位や専门范囲の制限はなく、やりたければ何をやっても、どれだけやっても构わない。だからこそ〝自分が何をしたいか″が常に问われる环境でした。自分が面白いと思うことを探究し、それを楽しむ。そのような惭滨罢のメンタリティは今も私の中に息づいています。
気候変动のエキスパートとして世界をまたにかけて活跃
惭滨罢では気候変动における适応策(アダプテーション)について研究しました。既に灾害や异常気象が起きている现在、途上国では适応策の実行が急务です。日本では何ということもない小さな自然灾害が、途上国では大灾害に発展するリスクがある。その分野での仕事をめざし、卒业后は闯笔翱派遣を通して国连开発计画(鲍狈顿笔)に入职しました。ちょうどその顷〈アフリカ?アダプテーション?プログラム〉という、まさに自分の専门分野に関わるプロジェクトが行われていたからです。気候変动の専门家として、アフリカと太平洋岛屿国の适応策支援に取り组みました。十分な知识を持って临んだのですが、やはりそこで暮らし、日々影响を体感されている住民の方々から学ぶことは多かったですね。ハード面における短期的な支援だけでなく、技术支援や意识改革など长期间にわたるパートナーシップが必要だということも、改めて感じました。この间正规职员へと採用されましたが、「さらなるスキルアップを図りたい」、そして「より良い支援を行うためにもっと日本の知见を生かしたい」と考えるように。そこで世界银行の东京防灾ハブに転职したのです。
东京防灾ハブは日本と世银による〈日本―世界银行防灾共同プログラム〉を通して日本と世界各国の専门知识を结ぶ拠点。道路やダムの修復?造设、都市开発などのインフラ関连、また、各国の开発计画レベルでの防灾の取り组み、リスクファイナンス、ソーシャルセーフティーネットなどの分野で世银が行っているすべての开発支援に防灾対策の知见と技术を生かす役割を担っています。日本はこれまで多くの自然灾害に见舞われながらも立ち直り、豊かな社会を筑いてきました。その知见とノウハウを世界规模で标準化するための取り组みです。私は今ここで、防灾専门官として働いています。
専门性を磨くために中高时代からできること
仕事は本当に面白いですね。世银は「开発の総合デパート」と例えられる通り、あらゆる分野のノウハウがあります。各分野のエキスパートと协働することで学ぶことは多く、一绪に新しい分野を作っていくこともできる。自分の能力と顽张り次第で、可能性は无限に広がるのです。だからこそ自分の「専门性」が何より大切です。自分は何が得意で、何に兴味があるのか。チームにどう贡献することができるのか。それを具体的に示し続ける必要があります。国际机関は完全能力主义で、终身雇用ではありません。自分の成果と目标を轴に、常に次のポジションへ向けてステップを踏み続けなければならない。入行后もさらなる知识のブラッシュアップが必要です。そして、様々な国の人々と働ける环境も魅力的です。异なる考えや価値観に触れ、日々视野を広げていけることは、国际机関で働く醍醐味ではないでしょうか。
それゆえの苦労ももちろんあります。多様な文化や価値観が存在することで、合意形成の难しさが表面化しやすいのです。そんな时はあらかじめお互い譲れないポイントを确认し合い、差别化するようにしています。その上で、一つのことだけで议论するのではなく、二つ以上の议题をテーブルに乗せる。そうすることで一つは譲り、一つは优先させてもらうという交渉ができる。パイを広げることで、合意形成を筑き易くすることができるのです。
世銀にもJPO制度があるので、是非多くの若い人にチャレンジしてほしいですね。大まかな枠組みの中で配属先が決まる国連のJPO とは違い、世銀のJPOは個別ポストによる募集です。即戦力として貢献できる、高い専門知識と職務経験が必要とされます。また、職員は欧米の大学院出身者が多いですね。欧米の大学では、自己PRやプレゼン、ディスカッション力が鍛えられる。それらの力は国際機関でそのまま役に立ちます。英語力の習得は当然として、もう一歩踏み込んだコミュニケーション力の体得が不可欠だと感じます。
これから国际机関をめざす中高生の皆さんには〝自分の兴味に自覚的″であってほしいですね。自分の兴味や特性を见极めるのは非常に难しく、私自身、専攻を决めたのは留学から帰国した大学3年时です。しかし「何が面白いと自分は思うか」については、常に问い続けていました。そして留学やボランティアなど、自分の生活圏から思い切って飞び出してみることも〝自分の分野″を引きつける原动力になるのではないでしょうか。そして一度出会ったらその后は、学歴から职歴に至るまで一贯したキャリア形成を心がけてください。国际公务员としての道は、きっとあなたのそばにあります。
(※)JPO 派遣制度…国際機関を志す若者を支援するプログラム。日本政府が経費を負担して当該機関に一定期間派遣し、正規採用へとつなげることを目的とする。修士号と2年以上の専門分野での職務経験が条件。
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