(仮訳)
ご绍介ありがとうございます、ミシェル。本日は、「デイビッド?础?モース讲演シリーズ」の讲演者としてお招きくださった外交问题评议会に御礼申し上げます。この栄えある场をお借りして、世界の开発を取り巻くいくつかの根本的な问题、そして途上国や民间セクターが今后これらの难しい课题に取り组んでいく际、世界银行グループがどのような支援の役割を果たせるかについて、お话しさせていただきたいと思います。
これまで长い间、裕福な人々は世界の贫しい人々の生活についてある程度理解していましたが、その逆はありませんでした。それが、今日の世界がこれまでと决定的に违うのは、それまでベールにつつまれていた豊かな人々の暮らしぶりを贫しい人々が知ってしまったことです。今や贫しい村落でも珍しくないテレビやインターネット、携帯电话を通じて、以前はぼんやりとしか分からなかった上流?中产阶级のライフスタイルが毎日、鲜やかな画像で贫困家庭にも伝えられるのです。これは、大きな変化をもたらしました。
世界各地で起きている政情不安の直接の原因は様々ですが、その多くは、今日の世界が呈するこの新たな特徴に根ざしています。途上国の人々は、世界中で多くの人々が享受している経済的机会を自分や子供たちが手にするにはどうすればよいのかと自问しています。すべての人が、他の人の暮らしぶりを知ってしまったのです。
昨年、ボリビアのエボ?モラレス大统领と共に海抜4200メートルの村を访れた时のことです。そこでなんとサッカーをしたのですが、私たちの到着するところを、村人たちはスマートフォンで写真に収めていました。また、インドで贫困层が最も多い州であるウッタル?プラデシュ州を访问した际には、住民が韩国のメロドラマをスマートフォンで见ていました。谁もが自分、そして特に子供たちのために、より多くの机会を望むようになっているのも无理はありません。
世界には不平等な现実があふれています。富裕层と贫困层の格差はここワシントンでも歴然としており、それは他の国の首都でも同様です。にもかかわらず、経済成长から取り残された人々は、我々のように恵まれた立场の人の视界にほとんど入ってきません。ローマ法王フランシスコの言叶を引用させていただくと、「ホームレスが路上で冻死しても报道されないが、株式市场が下落すると悲剧として取り扱われる」のです。
裕福な先进国に住む我々には、贫しい人々の苦しい暮らしぶりは分かりません。しかし贫しい人々は、世界中で裕福な人々がどのように生活しているかをよく知っているのです。そして彼らは、それを得ようと努力する决意を示しています。
尊厳をもって隣人と接するという道徳上の理由からだけでなく、女性や若者、贫困层も组み入れた経済成长は万人の利益に资するという経済议论に则れば、我々は経済面の选択が贫困层や脆弱层に与える影响から目をそらしてはいけません。不平等は私たちすべてを伤つけます。中东?北アフリカ地域では、女性の経済参加が低いために所得の27%が失われています。反対に、包摂的な成长を进めれば、人々と政府の间で一段と强固で确かな社会的盟约が生まれ、より力强い経済成长を达成できます。例えば、女性の雇用率を男性と同水準にまで引き上げれば、平均所得が南アジア地域では19%、ラテンアメリカ地域では14%増大すると见込まれます。
1年前、世界银行グループ総务会は、2つの新たな目标を承认しました。1つ目は、2030年までに极度の贫困を扑灭するために全力を注ぐことです。最贫困层の人々は1日1.25ドル未満で暮らしています。1ドル25セントといえば、毎夜帰宅したときズボンのポケットに残っている小銭にも満たない额です。それなのに、今も中所得国や贫困国では10亿人以上がさらに少ない金额で一日を送っているのです。
総务会が承认した2つ目の目标は、途上国で所得の下位40%の人々が繁栄の果実を共有できるようにすることです。しかし、たとえ各国が过去20年间と同じペースの経済成长を果たしたとしても、所得分布が変わらない限り、2010年に17.7%*であった世界の贫困率は、2030年に7.7%までしか削减されません。过去20年间に、世界では年间平均で约3500万人が最贫困层から脱け出すことができました。しかし、2030年までに极度の贫困を扑灭するという目标を达成するためには、実に年间5000万人もの人々を贫困から救い出す必要があります。
今日、世界が直面する主要课题は、数百万人単位では収まらず数十亿人単位で影响を及ぼしています。例えば、エネルギーにアクセスできない人々は20亿人近くに上り、また基本的な金融サービスを受けられない人々は25亿人と推定されています。さらに、気候変动がもたらす深刻さに见合うだけの対策を直ちに行わなければ、我々全员、つまり70亿人が近い将来に灾害の危険にさらされるでしょう。
マーチン?ルーサー?キング牧師はかつて、「道徳の世界の弧は長いが、それは正義に向かっている」と表現しました。今、我々は、キング牧師がそうしたように、自らに問うべきです。十亿人以上が極度の貧困から抜け出すことができるよう、歴史の弧をあえて正義に向けて曲げているかと。私は、世界銀行グループ総裁に就任してからの21か月、毎日この質問を自分に問いかけています。
総裁着任から3か月后に、我々は「ソリューション?バンク」という概念を打ち出しました。これは、我々の経験に基づく膨大な知识や根拠となる証例を、世界各地の问题に応用するというものです。さらに着任から1年后には、理事会が先に述べた2つの目标を承认しました。これらの目标达成に向けた业务体制を整える戦略が承认されたのは、今からわずか半年前のことです。以来、我々は大规模な组织改革を実施し、ビジョン通りのソリューション?バンクとなって、途上国が2つの目标の达成に向けて最も难しい问题に取り组めるよう努めています。
世界银行グループは、エコノミスト约1,000人、博士号保有者2,000人という卓越した知性を拥する组织です。博士号保有者が2,000人いれば、ひとつの课题を4,000の目でチェックすることになります。私は、こうした组织で働けることを幸运だと思っています。総裁に就任して以来、职员からの适切なアドバイスに事欠かなかったのはご想像の通りです。
职员の热意と洞察を日々目の当たりにするにつけ、彼らが自らの使命に真剣に取り组んでいることが改めてよく分かります。最近行われた职员アンケートでは、ある问いへの回答结果に大変勇気付けられました。职员の90%が、世界银行グループで働いていることを夸りに思うと答えたのです。こうした経験、人材、知识のすべてを动员して、それらを必要としている国や公司が利用しやすくする组织を作る事が、我々の责任です。
各国政府や公司には、资金や知识を得る先として他に数多くの选択肢があるという议论の余地のない事実を前に、我々はこれまでとは违った形で业务を进める必要があります。国や公司をはじめとするパートナーに、どこよりも优れた実地体験と助言を提供するためには、我々のもつ比较优位性が明确でなければなりません。今后、我々世银グループは、これまで以上にグループ机関が结束して业务を行っていく所存です。それにより、公的セクターを担当する世银职员と、民间セクター支援に携わる滨贵颁职员、そしてリスク保険?保証を提供する惭滨骋础职员がそれぞれの経験を持ち寄って、クライアント国により良いサービスを提供できるのです。
我々はまた、「グローバル?プラクティス」という専门グループを设置しました。これは、水、保健、金融、农业、エネルギーなど14の分野の専门家で构成されるもので、各プラクティス?グループのシニア?ディレクターの大半は数日以内に発表の予定です。
もしも贵方が水を担当するグローバル?プラクティスのシニア?ディレクターに任命されたら、女児が学校に通う代わりに毎朝近くの川に炊事や扫除用の水を汲みに何キロも歩くことがないよう、水と卫生への投资について计画立案を统括することになります。贵方の下には、水の専门家约200名が配置されます。贵方とグループ干部は、この専门家集団を駆使して、世界中で世银が実施する水プロジェクトを検証した上で、例えば、バングラデシュ、ペルー、中国、アンゴラなどの水プロジェクトを担当させるなど、その国特有の问题に対処するために、特定の知识を选んで特定の国に适用していくのです。贵方の一番大切な仕事はソリューションの提供です。その际、何百万人もの贫しい人々が贫困から脱出できるような、水と卫生分野における最高のアプローチを见出すことが期待されるでしょう。私の考えでは、贵方と200名の専门家こそが、水分野で世界最高の仕事に就くことができるのです。
知识の普及と成功したプログラムの拡大(すなわち「デリバリーの科学」)の责任は、グローバル?プラクティスの责任者を含め世银グループの干部全员が负っています。デリバリーとは、意図する成果が予想通りのコストの许容范囲内で、意図する受益者に确実に届くようにすることです。デリバリーの规模を拡大するには、知识の収集?整理、卓越した问题解决、复雑なシステムへの対応、社会の目标达成への取り组み、そして効果の测定が必要となります。我々が约束を果たすことができれば、世界を一変させるような効果がもたらされるでしょう。
もちろん、世界の开発ニーズは世界银行グループの対応能力をはるかに超えています。それでも、我々にできることは沢山あります。知识やソリューションを途上国に伝える手法が向上するにつれ、それに対する需要は高まるものと期待しています。そうした需要増に対応するため、我々は、财务能力を强化して、収益拡大と资本の増强を図っています。
また、理事会のご支援により、滨叠搁顿の中所得国向け年间新规贷出承认额がこれまでの年间150亿ドルから280亿ドルへとほぼ倍増したことを、本日発表させていただきます。これは、今后10年间で、滨叠搁顿の贷出上限额、すなわち世界银行のバランスシートに计上可能な贷出额の合计が1000亿ドル増え约3000亿ドルに达することを意味します。さらにこれに、国际开発协会(滨顿础)の第17次増资が加わります。最贫国向けの基金である滨顿础は过去最高を记録した今回の増资により、新たに约520亿ドルを赠与や譲许的融资に活用できるようになります。
同時に、民間セクターへの直接支援も増えつつあります。多数国間投資保証機関(MIGA)は、今後4年間に新規保証額を50%近く増やす予定です。また、国際金融公社(IFC)は、今後10年間に投融資ポートフォリオをほぼ倍増させ900億ドルとする予定です。10年后にはIFCの新規コミットメント額は年間260億ドルに達すると見込んでいます。
世界银行グループ全体の年间コミットメントをみると、现在のおよそ450~500亿ドルから今后数年间で700亿ドル以上に増えると予想されます。これほどの资金力の拡大は、かつてないことです。こうして世界银行グループは、今后数年间、数千亿ドルに上る资金を毎年动员?活用できるようになります。
これと并行して、伦理的観点から、组织内の経费节减に目を向ける必要があります。大规模な组织には、ほぼ例外なく効率性向上の余地があります。我々は今后3年间で4亿ドルの経费削减を行うという目标を掲げました。削减项目の内訳は数日以内に明らかにする予定ですが、削减により得られた资金は途上国に再投资します。组织の拡大を図るには、まず赘肉を削ぎ落とす必要があると私は确信しています。
それでは今后、世界银行はどのように変わっていくのでしょうか。我々は、具体的な証例に基づき、大胆に业务を展开していきます。极度の贫困层の3分の2は、インド、中国、ナイジェリア、バングラデシュ、コンゴ民主共和国の5か国に集中しているという事実があります。これに、インドネシア、パキスタン、タンザニア、エチオピア、ケニアの5か国を加えると、実に世界の最贫困层の80%となります。世界银行は、これらの国々に特に注力していきます。が、だからといって他の国々をないがしろにする訳ではありません。2030年までの目标达成に向けた歩みは、ひとつの国も取りこぼさないという戦略に沿って进めていきます。
では、我々はどのように大胆になるのでしょうか。
まず1つ目の例として中国があります。我々は先週、中国政府と共同で、中国の都市の将来に関する报告书を発表しました。この报告书の作成には、世界银行グループの职员100人以上が関わり、环境に配虑した成长や公害、农民の土地所有権など、开発と都市化をめぐる主要课题の政策について中国政府への提言が盛り込まれています。同报告书は中国が、国民の生活水準向上を図るため、成长を量から质へと転换するのに役立つでしょう。中国から得られた教训は世界中の都市に恩恵をもたらすものと期待しています。
2つ目の例は、コンゴ民主共和国の大インガ水力発电プロジェクトです。ちょうど2週间前、理事会は同国に対する7300万ドルの赠与を承认しました。大インガ発电所は、世界最大の水力発电所となる可能性を秘めており、その発电量は40ギガワット超と、サブサハラ?アフリカ地域で供给されている全発电量の半分に匹敌します。さらに今后30年间、仮に火力発电所で同量の発电を行った场合に比べ、二酸化炭素排出量を计80亿トン削减することができます。アフリカでは、切実に电力が必要とされています。アフリカ全土の人口10亿人の現在の電力消費量の合計は、人口1100万人のベルギーの消費量に相当します。これは一种のエネルギー隔离政策(アパルトヘイト)であり、アフリカ诸国の成长を助け、そこで暮らす全ての人々に机会を创出しようと真剣に考えるのであれば、解消しなければならない问题です。
3つ目の大胆な行动の例は、条件付き现金给付プログラムに対する世界银行の支援です。このプログラムは、例えば子供の就学や健康诊断などを条件に、贫困世帯に毎月现金を支给するというもので、目覚しい成果を上げてきました。カンボジアの一部地域に住む贫困世帯の子供の就学率は、この条件付き现金给付プログラム导入以前は60%でしたが、プログラム导入后の现在は90%近くまで飞跃的に伸びています。タンザニアでは、同国政府と国连の协力を得てプログラムの大幅拡大が可能となり、2010年の导入当初には2万世帯であった现金给付受给者数は、来年半ばまでに100万世帯、人数にして最贫层500~600万人に达するとみられます。これこそ、成果を上げているプログラムの特定、パートナーとの协働、そして高い効果をもたらすソリューションの拡大を通じて目标を达成した実例と言えるでしょう。
以上が、各国をより効果的に支援するために、世银グループが进めている取组みです。我々は、市民社会や民间公司などのパートナーやステークホルダーとより効果的に业务を进めることに、より一层力を注いでいきます。そのためには、パートナシップと、坚固な国际机関、活気にあふれた民间セクター、そして强い决意を持った政治的リーダーが必要です。しかし、最も重要なのは、贫困扑灭のための世界的な动きに向けて世界中の人々がひとつにまとまることです。
私は、医师として、保健分野における活动家として、そして保健政策の担当者として、1990年代から始まった贬滨痴/エイズ扑灭のための国际的な运动に携わってきました。エイズとの闘いは、この病魔に侵された人々の壮絶な苦闘の物语ですが、同时に、共通の目标に向けて人々を结集させた国际的な运动として、歴史に残る感动的な成功例のひとつでもあります。
1990年代末に贬滨痴の治疗法が出现すると、様々な组织が国境を越えて真にグローバルなエイズ扑灭运动を展开し、この治疗法をあらゆる人々に普及するために尽力しました。过去10年间に途上国におけるエイズ治疗へのアクセス数が200倍と飞跃的に増えたのは、まさにこの运动の成果です。その结果、何百万人もの人命が救われ、多くの子供たちが亲を失わずに済んだのです。
乗り越えられないように见える问题であっても、社会的な运动を通じて解决策を见出すことが可能です。我々は、こうした活动から学んだ教训を活かして、贫困扑灭、繁栄の共有促进など、今日の难しい课题を乗り越えられるような运动を育み、気候変动のために経済成长が回復不能なほど损なわれ、子供たちの未来に影响を及ぼさないようにすべきです。
昨年秋、私はローマ法王フランシスコに謁見し、こうした課題について話し合うという光栄に浴しました。私が、世界銀行は2030年までに極度の貧困をなくすための地球規模の運動を起こす決意だと申し上げると、ローマ法王は一言、「あなたをお助けします(Cuenta conmigo)」とお答えになりました。ローマ法王フランシスコのようなリーダーの下でこそ、我々の世代で贫困を扑灭するという地球规模の运动が可能になるのです。
より公正で持続可能な経済というビジョンを坚固とした行动に繋げ、将来への遗产として残すためには、国际社会全体がひとつとなって取り组まなければなりません。国际机関や各国政府、公司、そして世界各地のコミュニティで、このビジョンを现実のものとするための活动がすでに始まっています。これらの人々に向け、そしてご来席の皆様全员に向け、私はこうお伝えしたいと思います。「世界银行は皆さんと共にあり、皆さんを支援する準备ができています。我々に期待してください(Cuenten con nosotros)」。
ご清聴ありがとうございました。
*2010年の最贫困层の割合は、途上国で21%、世界全体で17.7%と推定される。